共依存症とは、主体的でない生き方をする人、自分の事より他人の世話ばかりしている人のことを指します。
元々は、アルコール依存症者とその家族の関係性を、説明するときに使われてきました。
最近では、アルコール依存症だけでなく、ギャンブル依存症、DV(ドメスティックバイオレンス)、の周囲でも同じような傾向が見られ、共依存症の概念が広く使われています。
では、さらに詳しく共依存症について、考えてみましょう。

共依存症者とは(1)

共依存症者とは

共依存症とは、主体的でない生き方をする人、自分に焦点が当たっていない人、あるいは、自分の事より他人の世話ばかりしている人のことをさします。
他人の気分によって自分の気持ちが左右されるため、今度は相手の感情を支配(コントロール)したくなります。
自分らしく主体的に生きるのではなく、自分に焦点を当てるのはやめ、他人に振りまわされる生き方を選びます。
誰かと一緒にいると、自分を見失い相手に巻き込まれる感覚があります。そのため、誰かに必要とされる事で、自分の存在価値を確認する傾向があります。

・いつも他人に振りまわされていませんか?
・優しい人と言われたいばかりに、頼まれてもいない事を一生懸命していませんか?
・嫌われたくないからって、人の顔色ばかりを伺っていませんか?
・苦しいけれど、離れられない関係に縛られていませんか?

共依存症の傾向(例題)

同棲している彼はアルコール依存症者です。

私が頑張らないと、彼の依存症は治らないと思います。
どうすれば、彼がお酒がやめられるか考え、でも彼が負担にならないように「ビールは一日一杯までOK」「外で飲んではダメ」「私の留守中に飲んではダメ」と決めました。彼も賛成してくれました。
ところがある日、帰ってみたら酒臭い彼がソファーで寝ています。私の留守中に飲んだのです。
私は裏切られたと感じ、頭にきました。
翌日、仕事をしていても彼のことで頭の中はいっぱい。
“彼は今も飲んでいるかもしれない”
仕事から急いで帰ってみると、彼はまた飲んでいました。
私はキレました。そして気付いたのです。
「私がいないとダメなんだ。彼はまたお酒を飲んでしまう」
会社はしばらくお休みすることにしました。

*アルコール依存症は彼自身なのに、彼女は自分の仕事を放棄して、彼の世話にのめりこんでしまいます。

彼はとても優しい人です。でも彼の付き合う相手はいつも問題がある人です。

彼と話していると、最近は彼女にDV(暴言や暴力)まで受けているというのです。
驚いて「別れた方がいい」と伝えました。
けれど彼は「彼女は優しいところもあるんだよ。昨日は料理を作ってくれたんだ」なんて話してます。
しばらくして、別れたと聞いて安心したのもつかの間、次の彼女も悪い噂のたえない人でした。
彼はどうしてこんなに女運が悪いんだろう。

夫はいつも不倫しています。

けれど夫は寂しがり屋で、私がいないとダメなんです。
私も一人になるのが怖い。
別れた方がいいのはわかっているけれど、別れられないのです。

私はいつでも家族を最優先に考えています。

でも家族は私を都合よく利用するだけ。
頼まれ事をしてあげても、お礼すら言ってくれないんです。でも、断ると罪悪感を感じるので、断りきれません。

私が共依存的な行動をとるのは、妻だけではありません。

誰に対してもそうなんです。両親、子供たち、同僚、友達・・
どういうわけか、人といると自分を見失ってしまうんです。人に巻き込まれるんです。

共依存症の歴史(2)

アメリカにおいて、アルコール依存症の回復にシステム家族論が導入され、アルコールをやめられない背景に、家族内で繰り返される悪循環が着目されるようになっていきました。
1970年代に、アルコール依存症の配偶者を「コ・アルコホリック」「パラ・アルコホリック」と呼ばれるようになり、1980年に入り「共依存(コ・ディペンデンスcodependency)」と呼ばれるようになっていきました。
共依存症は、アルコール依存症や嗜癖のある人の配偶者を指していましたが、時代とともにその子どもであるCOA(Children of Alcoholics)やACOA(Adult Children of Alcoholics)も指すようになり、一緒に生活をしている家族全体を指すようになっていきました。さらに、アダルトチルドレン同様に、アルコール依存症家族だけでなく機能不全家族にも拡大されていきました。
1980年代後半には共依存症という言葉が定着するようになり、1990年にはいると共依存症に関する出版物が増加していきました。
日本では、1989年に臨床家の間で言葉が広まっていき、1995年に「アダルトチルドレン」が世間に広がると、その後「共依存症」も定着していきました。

アダルトチルドレンと共依存症との違いは、アダルトチルドレンが個人の内面に焦点が当たっているのに対し、共依存症は他人との人間関係に焦点が当たっています。アダルトチルドレンも他人との人間関係に焦点を当てることはありますが、共依存症ほどに他人との関係性を重視していません。

共依存の特徴(3)

共依存の特徴

共依存症にはどんな症状がみられるのでしょうか。
その特徴を見ていきましょう。

他人の面倒をみたがる

求められてもいないのに、アドバイスしたり、指示したり、感情を落ち着かせようとしたりして、相手の問題の解決に使命感を抱いてしまう。
しかし、自分の援助がうまくいかないと、怒りを感じる。
なぜ相手が言ったとおりにしてくれないのか自問する。

自己の価値を低くする

何かにつけて自分を責める、自分のアラ探しをする。
拒絶されることを恐れ、自分が必要とされていることに満足する。

抑圧的である

あるがままの自分になることを恐れている。
厳格で自制しているように見える。

強迫観念にとらわれやすい

問題や問題を抱えた人のことで、ひどく不安を感じる。とるにたらない事を心配する。
他人のことばかりに振りまわされているために、自分の身づくろい、化粧といった日常行為をないがしろにする。

相手をコントロールしたがる

思い通りにいかない出来事や制御できない相手のことで、悲観にくれ、失望しながら生きている。
事態がどうあるべきか、相手はいかに行動すべきかをもっともよく知っているのは、自分に他ならないと考えている。
相手や事態に支配されていると感じる。

事実を直視できない

問題を無視したり、問題が起きていないと思い込む。
明日になれば事態は好転していると自分に言い聞かせる。
仕事中毒、衝動買い、過食、などにとりつかれる。
自分の気が変になりつつあるような気がしてならない。

なにかに依存せずにはいられない

幸福感、満足感、心の平穏を感じない。幸福を与えてくれそうな人や物事、なんにでもしがみつく。
うまくいっていない人間関係を継続しようとする。
自分は人から愛してもらえない、愛されることはありえないと思い込んでいる。

コミュニケーション能力に乏しい

本心を言わない。言葉と本心がうらはらである。何が本心かわかっていない。
人に喜ばれそうなことを言おうとする。
自分のことを真剣に取り上げようとしない。 あるいは、極端に真剣になりすぎる。

他人との境界があいまいである

徐々に忍耐力を強め、イヤと言っていた事にも耐えられるようになる。
相手が自分を傷付けるのを、そのままにしておく。そして、なぜ自分は傷つくのか自問する。

信頼感を喪失している

自分自身を信頼しない。他人を信頼しない。
信じるに値しない人を信頼する。神が自分を見捨てたと感じる。

怒りの感情が正常に働かない

自分自身の怒りを恐れている。相手の怒りにびくびくする。
自分を怒らせたという理由で相手を罰する。
怒りを感じたことで、自分を恥じたり、罪悪感を抱いたりする。

セックスが楽しめない

したくないときでも、性交渉をもつ。楽しめない。
抱かれたり、優しくしてもらいたかったり、愛されたいために性交渉をもつ。

セックスについて話さない。

セックスの相手が死ぬか、いなくなるか、せめて自分の気持ちに気付いてほしいと感じている。
不倫を考えたり、実行したりする。

行動が両極端である

責任感が異常に強い。ひどく無責任。
優柔不断で煮え切らない。泣きたいときに笑ったりする。
家族のこと、自分のこと、あるいは人間関係の問題について恥じる。

共依存症は病気ではありません。
しかし、症状が進んでくると・・
無気力になる。抑うつ状態になる。引きこもり、孤立する。
日常の雑事を全くしなくなる。
子供を虐待したり、自分の責任範囲のことまで無視したりするようになる。
絶望的になる。自分がワナにかかっていると思い込み、そこからの逃亡を考えるようになる。
暴力的になる。情緒的、精神的、肉体的にも病んでくる。過食、拒食などの摂食障害が起こるようになる。
アルコールや薬物などを常用するようになる。

共依存症は人助け病?

共依存症になりやすい職業としては、看護婦、介護士、カウンセラーなどがあげられます。
また、障がいを持つ方とかかわっている人、慢性病の介護をしている人、責任感のない人と付き合っている人、依存症者と付き合っている人などに多くみられます。
そして、共依存症者はアダルトチルドレンでもあります。

アダルトチルドレンをさらに詳しく

共依存からの回復(3)

長年に渡っての馴染み深い人との関わりを変えることは時間のかかることです。
でも、今からでも生き方は変えられます。
相手に巻き込まれ自分を狂わす人生、生きる楽しみをもてない人生、他人なしでは生きられない人生、人のせいにばかりしている人生から、自分の人生を取り戻しましょう。

回復において重要になるのが、他者との「境界線」です。

自分から相手の領域へ侵入をしない。また、自分の境界線の中へ、他者を侵入させない。健全な境界線を作ります。

セルフケア

セルフケアで大切なことは、完全にできなくても気楽にかまえること。リラックスすることです。
うまくいかなくても、頑張っている自分を褒め、ゆっくり進んでいきましょう。

一瞬の間を置く

衝動的に行動しがちなので、冷静に自分で考える時間を作りましょう。

  • どうしてその人の世話をしようとしているの?
  • その人に好かれることで自分の存在価値を確認しているの?

他人をコントロールできると思うのは全くの思い違い

本当にコントロールできるのは、自分自身のことだけである、ということを学びましょう。

強い力を感じる人(してあげられることの沢山ある人)のそばには近寄らない

自分をうんと好きになる

毎日一人でいる時間を数時間作る。
そして、自分の長所をたくさんあげてみましょう。

どんどん外へ出て、援助を得ましょう

他人のことでなく、自分のことを考えましょう。
自分のことで助けを求めましょう。

何も起こっていないかのように振舞うことが多いので気をつける

現実なのか、思い込みなのか見極める。
目の前で起こっていることが現実です。

自分の考えや行動に、責任をもったものの言い方をする練習をする

「私は~と思う」「私は~である」「私は~は苦手です」
「私は~」 という話し方をする練習をしましょう。

自分と他人とは考え方も感情も違う、個別の人間である自覚をもつ

他人のことを所有物のように話していたら要注意。
他人と自分との「境界線」をはっきりさせましょう。

自分の第六感(直感)を信じましょう

信頼できる友人や仲間と「怒り」について話をする

マイナスの感情、とくに「怒り」の感情は良くないものと考えることが多いですが、 「怒り」も正常な感情であることを学びましょう。
ただし、他人に向けるのではなく、原因の感情を考えることが重要。

ゆっくりと待つことを学ぶ

過剰な罪の意識は捨てる

自分のしたことに確信がもてないとき、したくないことをしたとき、罪の意識を感じます。
確信のもてる行動を心がけましょう。 自分の心に問いかけてみましょう。

ほどほどにする能力を見に付ける

白と黒だけではない、グレーもあることを学ぶ。
良い面、悪い面の両方をとりあげる。

過去の苦い経験を忘れないように記録にとっておく

救えない相手を救おうとしない

被害者意識を捨てましょう。

  • 相手を救おうとしない
  • 相手を責めない
  • 自分のしたことに責任をもつ

自己の確立に力を注ぎましょう

人に寄りかかるのでなく、一人で孤立するのでなく、精神的な自律をしましょう。

参考・引用文献
「アダルトチルドレンと共依存」緒方明
「共依存症 苦しいけれど、離れられない」信田さよ子