『「自分がない大人」にさせないための子育て(3)』ロングインタビュー

「自分がない」とは、どういうことかというと、まず1つ目は、自分の感情を持たないということです。2つ目に、他者や世間の基準に絶えず自分を合わせてしまっているということです。一番大きな原因は、親自身が「自分がない」状態で過ごしていることです。子供は親をモデルとして育ちます。つまり「自分がない」状態は連鎖していくわけです。「自分がない親」に育てられた子供たちが、「自分がない人間」になっていく。そして、そういう子供が親になった時に、また、「自分がない子供」が育っていく。そういう悪循環が絶えず起きていくわけです。

わが子をそういった子供にしてしまう親を、「毒親」と呼ぶかもしれません。アダルトチルドレンや毒親の問題は、世代を越えて連鎖していきます。「心が空っぽな親」は、それを覆い隠すかのように、子供にさまざまなことを要求します。すると子供は、「自分がない」子供になって、親の期待に応えようとしすぎてしまいます。こうやって、「自分がない大人」が親になり、「自分がない子供」を育て、またその子供が「自分のない親」になり、「自分がない子供」を育てるという、世代を超えた悪循環が起きやすいのです。この連鎖を断ち切ることができるのは、自分自身だけなのです。

人生はいつからでも、変えることができます。それは、全て、自分の自己選択次第なのです。「自分が自分の人生の主人公になる人生」を、今、選択する。このことから自分を変えることができます。「自分が自分の人生の主人公になった人生」を生き始めることができるのです。そうやって自分を変えることができた人は、子供に過剰な期待や願望を押し付けるのをやめることができます。
この瞬間、「『自分が空っぽな親』が、『自分が空っぽな子供』を育てるという悪循環の連鎖」から抜け出すことができるのです!

では、「自分がない」人は、どうしていけばよいのでしょうか?

親と心理的に別れる事が大切です。
一番良いのは、物理的に離れることです。早く一人暮らしをすることです。できれば10代から一人暮らしをすることです。半年でもいい。実家から大学に通えたとしても、一人暮らしをするといいです。

親によくしてもらったのに、申し訳ないと思う方もいらっしゃいますが。

これは、『ゲシュタルトの祈り』という、自分が「自分の人生の主人公」になっていきようということを唱えた、ゲシュタルト療法の提唱者、フレデリック・パールズが唱えた詩を親子関係バージョンにしたものです。

「私は私。
娘は娘。(息子は息子)
私には私の人生がある。
娘には娘の人生がある。
私は、親の期待に応えるためにこの世に生まれてきたわけではない。
娘も、私の期待に応えるためにこの世に生まれてきたわけではない。
私は私。娘は娘」

これを毎日毎日、何度も何度も、自分の心の中でつぶやいてみましょう。あなたが自分の人生を変えていく最初の一歩(ファーストステップ)になるはずです。

あなたが自分らしい人生を生きていくことを、心から応援しています!

諸富祥彦
1963年福岡県生まれ。
1986年筑波大学人間学類、1992年同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、助教授(11年)を経て、現在、明治大学文学部教授。教育学博士。
世界を変えるため、時代の精神(ニヒリズム)と「格闘する思想家・心理療法家」(心理カウンセラー)。
日本トランスパーソナル学会会長、日本カウンセリング学会認定カウンセラー会理事、日本生徒指導学会理事。
教師を支える会代表、現場教師の作戦参謀。
臨床心理士、上級教育カウンセラー、学会認定カウンセラーなどの資格を持つ。

参考・引用文献
「「自分がない大人」にさせないための子育て」P3.18-22.154-172(PHP研究所)
「カール・ロジャーズ入門 自分が“自分”になるということ」P22.143.146.148(コスモスライブラリー)
近著
「「本当の大人」になるための心理学 心理療法家が説く心の成熟」(集英社新書)
「孤独の達人 自己を深める心理学」(PHP新書)など200冊以上。
諸冨先生のワークショップ情報等はhttps://morotomi.net/